ブルーベリーシガレット

女子力は2次元ではなく3次元

悪友@東京を読んで

 

巷で話題の劇団雌猫さんによる「悪友 東京編」をこの度購入し数回読み、感想や感動や嫉妬や心苦しさを言葉にしておきたいと思い立った。

マーカー引いておきたいと思った痛烈に刺さった言葉を抜き出し、思ったことを述べて行くスタイルです。

 

○どんなに傷つき苦労することがあっても、何かを求め選ぶことのできる人間のほうに、わたしはなりたいのだと、東京にきて、はじめて知った。【/①これ以上青森では小説を書けなかった女】

人生の今後の選択をする場面で、田舎に暮らすことを前提に考えると選択肢は限られてくる。生まれてから何かを選びとってきた意識があんまりない。生まれ育った環境のせいにするのもあれだけど、わたし数ある選択肢の中から何かを自分の意思で選びとる力がめちゃくちゃ無い。だいたい小学校も中学校も校区内のところに通って、自分の偏差値と近いところの高校に入学するのがわたしの地元の学生のスタンダードコースだ。テストで何点取れたらあの高校、少し足りないからこの高校というような感じで学校の選択肢がそんなにない。私立の小学校中学校はひとつ、高校はふたつしかない。だから大学を決めるとき、よく分からなかった。行きたい学校?ないぞ、と思った。将来なりたい職業?よくわかんない、と思った。でも一応進学校を名乗る学校の空気から大学受験をして、なんとなくの方向性だけで進学してみた。具体的な将来の職業を見据えて志望校を決めた子を見ると羨ましかった。結構受験期最後のほうまで友達に「その学校にものすごく行きたい??」と聞いていた気がする。失礼だ。でも友達も「ものすごく行きたいっていうか…」みたいな返事だった。もうそれ以上は聞かなかった。だから、就職活動したときも何がしたいのか、何ならできるのか、全然わかなかった。就職活動は苦い思い出だ。もう誰か答えをくれ、って様々な場面で思ってしまうわたしになってしまった。

 

○私は東京に生まれ落ちたけれど、ある瞬間にこの手でこの場所を選んだのだ。無思考に留まっているわけじゃない。楽してない。惰性じゃない。その重さは、自分だけがわかっていればいいのです。【/⑤隅田川から逃げたかった女】

わたしは田舎生まれで東京に憧れる側の人間なので、もともと東京に住んでいる人の気持ちはたぶん一生分からない。正直東京に実家があるなんてどんな幸運な人生のはじまりなんだって羨望と嫉妬の眼差しを向けてしまうけれど、それでも東京に生まれた人も東京という場所への葛藤があるのだと知った。あと、東京にいようが地方にいようが、結局自分でその場所を選びとったという感覚が自分の人生への肯定感を高めるのだなと思った。

 

○東京の良いところは、誰も私に干渉してこないところだ。「いつ結婚するの?」「月収はいくらなの?」「女の子なのにそんなに働いて大丈夫?」と訊いてくる煩わしい親戚は、東京にはいない(田舎にはいるのだ、マジで。今時「女の子なのに」とか言ってくる人間が、たくさん)。【/⑪佐賀の星空を忘れた女】

確かに田舎にいるけど、東京にはいないの?!と思った。(いないの?) わたしは実家暮らし女で、父親は月収やボーナスの額を聞いてくるし、母親は「結婚するのにもお金かかるから貯金しておきなさい」と言ってくる。結婚するともしたいとも言ったことないのに。わたしの職場のだいたいの女性は20歳代で結婚して出産して産休育休入って復帰する。仕事は続けるけど昇進はしない道を自ら選んでいる印象。単純にそれは楽しいのだろうか?と思う。どんな自分を選ぶかはもちろん人によって全然違って、こういうふうにわたしもなるのかな、とは思うけど、こういうふうになりたいなとは正直思わない。

 

○19年間生きてきた佐賀の人たちから後ろ指を指されても、私は幼いころ夢見たあこがれの街で、テレビの中のような暮らしをするのだ。死ぬまで。(/⑪佐賀の星空を忘れた女)

この方の文章がちょっと良すぎるんですよね(誰) 結局東京に住むことを決意するわたしの足枷って地元に戻りたいときに戻れないかもしれないからで、地元が嫌いなわけではなくて、今は東京に住んでみたいって思ってるけど、もしやっぱり帰りたいと思ったときにそう簡単に就職難の田舎に戻れるかなんて分からなくて、それがすごく怖い。何かに挑戦する前から怖い怖い言ってるの本当にセンス無いと思うので、田舎に住むなら住む、東京に出るなら出るでどちらにせよ腹をくくりたい。でもこの方、東京で一人で生きているのが楽しくて仕方ないって仰ってて、葛藤があったかは存じ上げないですけど、東京での暮らしを決意して、どこか地元という田舎と決別したような潔さを感じて、ものすごくかっこいい。

 

○応援しているアイドルも、私が好きな東京の友達も、みんな、東京の明かりのひとつだ。東京で電気をつけて、東京の窓をひとつ光らせている。私もそうしたかった。(中略)でも今は、1人で東京へ飛び出して行けなかった自分を見つめていたい。ただただ見つめて、東京など関係ないと思えるまで、過去の自分を突っ切りたい(/⑭山陰の港町で光を探す女)

大変勝手ながら中略させて頂いてしまったんですけど、中略までの文章、言い得て妙というか(?)、わたしが思っているのはこういうことだったのか思った。わたしの大好きなジャニーズも東京にいる楽しいお友達も、田舎から東京を見たときにチカチカ見える光のひとつで、それぞれひとつひとつが東京に恋い焦がれる理由で、わたしもそれになることに痛いほど憧れてる。でもこの方は東京という場所と自分に向かい合って、もう関係ないと思えるまで突っ切りたいって仰ってる。なんか、言葉にするのも野暮でしょうか。もう素晴らしくて苦しい。あとこの方たぶん居住地そんなに遠くない(突然)

 

悪友はシリーズ通して愛読書だけど、今回に東京編が1番ぐさぐさと胸に刺さった。あと皆さん自分で東京と対峙していらっしゃって、自分のことをとても不甲斐なく思った。

 

わたしも東京で暮らしたい。今後心変わりしないかなんて誰にも分からないけど、少なくとも今は東京で暮らしたいと思っている。「そんな一過性の感情で人生変えていいのか」ってわたしの中の天使だか悪魔だかが言ってくるけど、何が一過性の感情で何が自分が生涯追い求めたいことか、なんてたぶん一生分かるようになんてならない。